自動運転が苦手な場面リスト:首都高と住宅街で「難しさ」が逆転する
執筆:沢村秋岳
2026年9月時点の情報です(最終確認日:2026年9月15日)
この記事で考えたいこと
運転から離れている人に「どこを走るのが怖いですか」と聞くと、首都高を挙げる人は少なくありません。右側から合流してくる車、短い加速車線、次々に現れる分岐。首都高は、運転に慣れた人でも緊張する道です。
では、自動運転にとっても首都高は難所なのでしょうか。そして、私たちが「いつもの道」と感じている家の近くの細い道は、機械にとっても簡単なのでしょうか。
調べてみると、どちらの答えも「いいえ」に近くなります。人間にとって難しい道と、機械にとって難しい道は、かなりの部分で入れ替わっています。この記事では、2026年9月時点で分かっている事例をもとに、自動運転が苦手な場面を一覧にし、その理由を整理します。
先に結論
首都高のような「ルールで整理された難しさ」は機械が先に越えていき、住宅街のような「その場で相手と折り合う難しさ」は、人間の担当として長く残りそうです。
ただし、きれいに逆転するわけではありません。首都高にも機械が苦戦する場所があり、雪や豪雨は人間にも機械にも難しいままです。「逆転」はおおまかな傾向で、例外があることも含めて読んでいただければと思います。
人間が苦手な場面を、まず数字で見る
JAFの会員誌のウェブ版が会員に「苦手な運転状況」を聞いた調査(2022年、複数回答)では、上位は積雪・凍結路(55.5%)、豪雨(48.2%)、濃霧(46.6%)でした。道の種類に関わる項目では、狭い道でのすれ違いが22.9%、都市高速が20.6%、合流が13.8%です(出典:JAF Mate Online)。
回答者は日ごろ運転しているJAF会員で、ペーパードライバーに限った調査ではありません。それでも、狭い道でのすれ違いが、都市高速と同じくらい苦手に挙がっている点は目を引きます。人間にとって住宅街の道は、「簡単な道」というより「怖さを意識しにくい道」なのかもしれません。
首都高:人間には難所、機械には「整理された問題」
首都高が人間にとって難しいのは、道の作りのためです。一般的な高速道路では合流や出口は左側にありますが、首都高では右側にある場所が多く、加速車線も短いことがよくあります。右ハンドルの車では、右側から合流するときの後方確認がしづらくなります(出典:carview!(乗りものニュース))。
一方で、機械の側から見ると、首都高には扱いやすい条件がそろっています。
歩行者と自転車がいない
予測しなければならない相手が、同じ方向に走る車にほぼ限られます。
道の形とルールが決まっている
車線、標識、分岐の位置は日によって変わらず、あらかじめ地図として持っておけます。
焦らない
人間を焦らせる速度や情報の多さは、機械にとっては性質の違う負担です。周りを同時に見続けることも、機械の得意分野です。
実際、自動運転の実用化は高速道路から始まっています。ホンダが2021年に発売した、国内で初めてレベル3と認められた車は、高速道路の渋滞時に限って運転を代わる仕組みでした(出典:Motor-Fan)。福山通運とT2が始めた自動運転トラックの取り組みも、高速道路の区間を中心に組み立てられています(出典:レスポンス)。
ただし、首都高にも機械の難所がある
首都高なら何でも機械が得意、というわけではありません。
首都高速道路会社は2026年2月、トヨタやSUBARUなど8者と、自動運転の車の合流を支援する共同研究を始めると発表しました。交通量が多く、合流区間が短いという首都高ならではの環境が理由です(出典:首都高速道路)。実験の場所は4号新宿線上りの代々木入口付近です。合流区間が約40メートルと短く、本線との高低差もあって車を見通しにくい場所で、2026年秋に実験が予定されています(出典:ニュースイッチ)。
人間が怖いと感じる短い合流は、センサーにとっても見えにくい場所だということです。先ほどのホンダのレベル3も、急カーブや料金所は使える範囲から外されていました(出典:Motor-Fan)。福山通運の自動運転トラックでも、料金所や安全確保が必要な場面ではドライバーが操作します(出典:レスポンス)。
それでも筆者が首都高を「整理された問題」と呼ぶのは、道路の側から手伝えるからです。本線を走る車の位置を道路のセンサーでつかみ、合流する車に通信で伝える。こうした実験は2020年にも羽田空港と臨海部を結ぶ首都高で行われ、自動運転の車が合流や料金所の通過を急な加減速なしにこなせることが確かめられています(出典:SIP自動運転)。管理する会社があり、出入口が決まっている道だからこそ取れる方法です。
住宅街:人間には「いつもの道」、機械には難所
家の近くの道には、首都高のような整理がありません。生活道路には、センターラインのない幅5メートル未満の道もあり、路肩には植木鉢やごみの収集箱のような背の低い物が置かれています(出典:JAF)。そこを歩行者、自転車、配達の車が行き来します。
機械にとっての難しさがよく表れた事例があります。
2023年10月、福井県永平寺町で、国内で初めてレベル4(運転者のいない運行)の許可を受けた車が、道の脇に止めてあった無人の自転車に接触しました。けが人はいませんでした。車はすれ違い用の待避所で時速約12キロから6キロまで減速し、近くで休んでいた自転車の持ち主には気づいていました。ところが、走路にわずかにかかる形で道と平行に置かれていた自転車は、認識できませんでした(出典:日経BP 新・公民連携最前線)。
原因の説明には、住宅街の難しさが詰まっています。レーダーなどのセンサーは自転車を捉えていましたが、この場所では不要な急ブレーキを減らすためにカメラの判断を優先する設定になっていて、そのカメラが自転車を見分けられませんでした。町の報告書は、学習データの不足を最大の原因としています(出典:日経クロステック)。
止まりすぎれば走れない。止まらなければぶつかる。見慣れない物が道の端にあるとき、その加減を決めることが、機械にとっては難しいのです。
国が選んだ先行13地域の技術課題にも、同じ種類の問題が並んでいます。茨城県つくば市では、路上駐車の車、交差点、横断歩道付近での認識と回避が課題に挙げられています(出典:デジタル庁)。狭い道で対向車とすれ違うために、相手の車が進もうとしているのか譲ろうとしているのかを、車の動きから読み取る技術も開発されてきました(出典:自動運転ラボ)。人間が目線や車の動きで自然にやっている「駆け引き」を、機械は一つずつ技術にしていく必要があります。
自動運転が苦手な場面リスト(2026年9月時点)
ここまでの事例と、国内外で報告されている出来事から、現時点で自動運転が苦手とする場面をまとめます。どれも「絶対にできない」という意味ではなく、「まだ安定しない」「条件付きでしか任せられない」という意味です。
1. 狭い道でのすれ違いと譲り合い
どちらが先に行くかを、相手の動きを見ながら決める場面です。ルールよりも、相手の意図を読む力が問われます。
2. 道にはみ出した物や、路上駐車の車
永平寺町の事例のように、置き方や向きが見慣れない物は、認識が揺らぎやすくなります。路上駐車の車をよけるには、対向車線に少しはみ出すかどうかの判断も必要です。
3. 歩行者や自転車が混ざる道、信号のない横断歩道
人の動きは車より予測しにくく、急に進路を変えることもあります。先行地域の技術課題にも挙がっている場面です。
4. 信号が消えた交差点
2025年12月、米サンフランシスコで市のおよそ3分の1が停電し、信号の消えた交差点でWaymoの車が相次いで止まりました。市の公聴会では、2分以上の停止が約1,600回あり、60台以上を人の手で動かす必要があったと報告されています(出典:ABC7)。人間なら周りと譲り合いながら順に進むところで、機械は慎重になりすぎました。
5. スクールバスや緊急車両などの「特別な合図」
米国では、止まっているスクールバスの横をWaymoの車が通過する事例が相次ぎ、2025年12月にソフトウェアのリコールが届け出られました(出典:CBS News)。米国家運輸安全委員会(NTSB)の予備報告では、ある事例で、車が遠隔の担当者に確認を求め、その担当者の誤った回答のあとに通過していたことも示されています(出典:KXAN)。永平寺町のレベル4でも、緊急車両が走路にいないことが運行の条件の一つでした(出典:RoAD to the L4)。
6. 警察官の指示や、工事などによる一時的な変更
日本のレベル4では、システムでは対応できない警察官の指示への対応などを、特定自動運行主任者という人が担う決まりになっています(出典:総務省)。
7. 雪、凍結、豪雨
永平寺町のレベル4の運行条件には、路面が凍結していないことが含まれていました(出典:RoAD to the L4)。先行地域の宮城県仙台市でも、凍結路面や坂道が技術課題です(出典:デジタル庁)。ここは人間にとっても苦手の上位で、「逆転」ではなく、どちらにとっても難しい場面です。
8. 高速道路の「端」:短い合流、料金所、急カーブ
首都高の代々木入口のような短い合流、料金所、急カーブは、高速道路の中でも機械が苦戦しやすい場所です。同時に、道路の側からの支援で解決が進んでいる分野でもあります。
このリストを、どう読むか
並べてみると、機械が苦手なのは速さや道の複雑な形そのものではなく、見慣れないもの、ルールの例外、相手との駆け引きだと分かります。人間にとっては、日々の運転の中で意識せずにこなしている部分です。
人間に難しいことが機械には易しく、人間に易しいことが機械には難しい。この入れ替わりは、ロボットやAIの研究では昔から「モラベックのパラドックス」と呼ばれて知られてきた傾向でもあります。
もう一つ大事なのは、機械の手が届くまでの間、これらの場面は運転席にいる人間の担当として残るということです。2027年度から2028年にかけて市販車に載る予定の高度な運転支援(いわゆるレベル2++)も、運転の責任は人にあります。警察庁も、運転支援機能を過信しないよう注意を呼びかけています(出典:警察庁)。機械に残された難しい場面を人間が引き受ける仕組みの危うさは、「自動化の皮肉」の記事で詳しく書きました。
期待できること:リストは短くなっていく
苦手な場面を並べてきましたが、どれも止まったままではありません。
永平寺町では、さまざまな向きの無人の自転車の画像を追加で学習させるなどの対策を取ったうえで、運行の再開を目指しました(出典:自動運転ラボ)。Waymoは停電のあと、広い範囲で信号が消えたときに車両全体へ指示を送れるようにしたと説明しています(出典:ABC7)。首都高の合流は、道路と車が通信で協力する方向で研究が進んでいます。
安全面のデータもあります。Waymoは、歩行者が関わるけがを伴う事故が、人間の運転と比べて12分の1にとどまるとしています(会社が発表している数字です。出典:KSAT)。苦手な場面が残る一方で、よそ見や見落としのように人間が起こしがちな事故は、機械のほうが減らせる可能性があります。
これから起きること(筆者の見立て)
ここからは、筆者の見立てです。
先に短くなるのは、高速道路の項目です。
首都高を含む高速道路は、道路側の支援を入れやすく、2020年代の終わりにかけて、運転支援に任せられる範囲が広がっていくと見ています。「首都高を走ること」への不安は、機械の支援で軽くなる人が増えるはずです。
次に進むのは、ルールとして書ける例外です。
信号が消えた交差点、スクールバスや緊急車両への対応は、一度起きた問題を学習やソフトウェアの更新で直していける種類の課題です。ただし、スクールバスの例のように、直したはずの問題が別の形で残ることもあります。
最後まで残るのは、住宅街の項目です。
狭い道の譲り合い、道の端の見慣れない物、歩行者と自転車の混在は、場所ごとに条件が違い、道路側の支援も入れにくい領域です。運転者のいない車が走る場合でも、しばらくは速度を抑え、決まったルートを走り、迷ったら遠隔の人に確認する形が続くでしょう。自分の家の前の道まで、場所を選ばずに機械に任せられるようになるのは、都心の一部を除けば2030年代に入ってからだと見ています。
この話が、誰にどれくらい関係するか
この入れ替わりがどれくらい自分に関係するかは、どんな環境下におかれているか?で変わります。
運転する予定が高速道路中心で、しかも数年先なら、機械の支援が先に届く側にいます。反対に、家の近くの送迎、近所の買い物、細い道の奥にある駐車場といった運転が中心なら、機械が最後まで苦戦しそうな部分が、そのまま自分の運転の中身になります。
また、首都高を走る場合でも、家から入口までは一般道です。運転支援の機能の多くは、使える道路や条件が決まっています。自分が運転することになる区間を「高速道路」「幹線道路」「家の近くの道」のように道の種類で分けてみると、機械に任せられる部分と、自分で担う部分が見えやすくなります。
講習の現場にいると、首都高や高速道路を不安な場所に挙げる方が多い一方で、実際に緊張が高まりやすいのは、自宅近くの細い道や駐車場だったりします。人が感じる怖さと、実際の難しさは、必ずしも一致しません。機械と人間のあいだで起きている得意・不得意の入れ替わりは、人間の感覚の中でも、少しだけ起きているのかもしれません。
よくある質問
首都高が怖いので、自動運転を待てば解決しますか?
首都高を走ることそのものは、機械の支援が比較的早く広がる分野だと筆者は見ています。ただし、これから数年のうちに市販車に載る機能は、運転の責任が人にあるレベル2です。また、首都高の入口までの一般道も含めて、どこまでを自分が担うことになるかで答えが変わります。
運転支援付きの車なら、住宅街は任せても大丈夫ですか?
住宅街は、機械がもっとも苦戦している場所の一つです。レベル2の機能は、使っている間も運転者が周りを見て、すぐに操作を代われる状態でいることが前提です。使える道路や条件は車ごとに違うため、取扱説明書や販売店で確認してください。
雪の日や大雨の日は、機械のほうが安全ですか?
現時点では、人間と機械のどちらにとっても難しい場面です。レベル4の運行でも、路面が凍結していないことなど、天候に関わる条件が付けられています。天候の悪い日は、機械に任せるか自分で運転するかの前に、移動の時間や手段そのものを見直す選択肢もあります。
出典一覧
[1]JAF Mate Online「車庫入れ?狭い道でのすれ違い?それとも○○?『苦手な運転状況』を大調査!」(2022年6月)
https://jafmate.jp/lifestyle/jafmatesouken_20220603.html
[2]carview!(乗りものニュース)首都高の右側合流について(2023年9月)
https://carview.yahoo.co.jp/news/detail/20a8d18e4dcb14b2ce7b144a7e50421d3ad0f53a/
[3]Motor-Fan(ホンダ・レジェンドのレベル3「トラフィックジャムパイロット」の作動条件)
https://car.motor-fan.jp/article/10018457
[4]レスポンス(福山通運とT2の自動運転トラックによる中継輸送、2026年9月)
https://response.jp/article/2026/09/09/416354.html
[5]首都高速道路株式会社「自動運転の普及を見据えたインフラ支援等に関する共同研究を開始します」(2026年2月18日)
https://www.shutoko.co.jp/company/press/2025/data/02/18-joint-research/
[6]ニュースイッチ(日刊工業新聞)首都高・代々木入口での合流支援の実証について(2026年2月)
https://newswitch.jp/p/48439
[7]SIP自動運転 東京臨海部実証実験(首都高速道路での合流支援情報とETCゲート開閉情報の活用)
https://www.sip-adus.go.jp/showcase/b7b.html
[8]JAF クルマ何でも質問箱(狭い道路を走るときの注意点)
https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-accident/subcategory-counterplan/faq134
[9]日経BP 新・公民連携最前線(永平寺町のレベル4運行と接触事故の状況、2023年12月)
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434148/120400123/?P=2
[10]日経クロステック「日本初の自動運転『レベル4』車両、事故の原因は学習データ不足」(2023年11月)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/08613/
[11]自動運転ラボ(永平寺町の事故の原因調査結果と対策、2023年11月)
https://jidounten-lab.com/u_44088
[12]RoAD to the L4(永平寺町のレベル4の認可・許可と走行環境条件)
https://www.road-to-the-l4.go.jp/activity/theme01/eiheiji-autholization/
[13]デジタル庁 モビリティワーキンググループ資料(先行的事業化地域の概要、2026年3月12日)
デジタル庁 ワーキンググループ資料(PDF)
[14]自動運転ラボ(日立Astemoの狭い道でのすれ違い技術、2023年5月)
https://jidounten-lab.com/u_41350
[15]ABC7 San Francisco(停電時のWaymo車両の停止に関する市の公聴会、2026年3月)
https://abc7news.com/post/san-francisco-leaders-press-waymo-stalled-robotaxis-during-december-power-outage/18669520/
[16]CBS News(スクールバスに関するWaymoのソフトウェアリコール、2025年12月)
https://www.cbsnews.com/news/waymo-recall-3000-vehicles-software-school-bus/
[17]KXAN(スクールバスの事例に関するNTSBの予備報告、2026年3月)
https://www.kxan.com/investigations/ntsb-human-error-prompted-waymo-to-pass-stopped-school-bus-in-austin/
[18]総務省「レベル4自動運転移動サービスの社会実装促進に向けた通信システムの信頼性確保等に関するモデル集 第1版」(2025年3月)
総務省 モデル集(PDF)
[19]警察庁「自動運転」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/index.html
[20]KSAT(Waymoのリコールと安全データに関する同社の説明、2025年12月)
https://www.ksat.com/news/local/2025/12/10/waymo-recalls-certain-models-due-to-possibly-not-stopping-for-school-buses-nhtsa-reports/