自動運転が来るなら、もう運転を練習しなくていい?ペーパードライバー講師が本気で調べた結論
この記事は2026年9月時点の情報をもとに書いています。
公開日:2026年9月11日 最終確認日:2026年9月11日
文:沢村 秋岳
「自動運転の車がもうすぐ出てくるなら、今から運転を練習しなくてもいいのでは?」
ペーパードライバーの方なら、一度はそう考えたことがあるかもしれません。
運転はしていないけれど、免許は更新し続けている。その理由として「将来的に車に乗るかもしれないから」を挙げた人は、56.3%にのぼります(現在・過去のペーパードライバーへの調査。出典:三井住友海上火災保険)。
免許を手放さないのは、「いつか運転する日が来る」と思っているから。そこに自動運転のニュースが重なれば、「その日が来ても、運転するのは車のほうかもしれない」と考えるのは自然なことです。
私たちはペーパードライバー講習の講師です。自動運転が広がれば、この仕事はいつか小さくなるかもしれません。だからこそ、自分たちに都合のいい答えに寄せず、2026年9月時点で分かっていることを調べ、講師として考えたことを正直に書きます。
この記事の結論
- 今後数年で個人の車に届く「自動運転」は、運転者が責任を持つ運転支援(レベル2、いわゆるレベル2++)です。運転できる人が見守る前提の機能なので、完全なるお任せ(運転を練習しなくていい理由)としては、まだ弱いのが実情です。
- 運転手のいない車(レベル4)は、東京ではまだ乗客を乗せていません。国の計画では、2027年度ごろから一部で始まり、2030年度にかけて広げていく段階です。
- そのため答えは、「近いうちに自分で運転する予定があるかどうか」で分かれます。予定がある人には、自動運転を待つより今の練習が役に立ちます。予定がない人は、急がなくてかまいません。
ここから先で、その理由をデータと一緒に説明します。
「自動運転」には、まったく違う2つのものがある
ニュースで「自動運転」とひとまとめにされているものは、ペーパードライバーの目線で見ると、大きく2つに分かれます。
| 自分の車に付く運転支援 | 運転手のいない車 | |
|---|---|---|
| レベルの目安 | レベル2(いわゆるレベル2++を含む) | レベル4 |
| 運転を担うのは | 運転者(車は手伝う役) | 決められたエリアや条件の中ではシステム |
| 乗る人に運転の技能は要る? | 要る(見守り、必要なときは自分で操作する) | 乗客として乗るなら要らない |
| 例 | トヨタ、日産、テスラが導入を進める機能 | Waymoのロボタクシー、各地の自動運転バス |
いちばん大事なのは、「そのとき運転しているのは誰か」という違いです。左側の運転支援は、どれほど賢くなっても、運転しているのは人間です。車が手伝ってくれるだけで、道路の状況を見て、危ないときに対応する役目は運転者に残ります。
右側の運転手のいない車は、決められたエリアや条件の中で、システムが運転を担います。乗客は運転しなくてかまいません。
「運転を練習しなくていいか」を考えるときは、自分に関係するのが左側なのか、右側なのかを分けて考える必要があります。
自分の車に届くのは「運転者が責任を持つ」機能
2026年9月時点で発表されていること
- トヨタ:2026年8月27日、2028年からレベル2++の機能を導入すると発表しました(出典:Car Watch)。
- 日産:Wayve社のAIと次世代LiDARを使った次世代プロパイロットを、2027年度に国内の市販車へ搭載する予定です。分類はレベル2です(出典:日産自動車、Car Watch)。
- テスラ:日本法人の社長が、FSD(監視付き)の日本での2026年中の実装を目指すと発言しています。FSDはレベル2で、運転の主体と事故の責任はドライバーにあります(出典:ITmedia NEWS)。
名前に「自動」と付くことがあっても、どれも運転者が責任を持つ機能です。デジタル庁のプロジェクトチームが2026年6月にまとめた提言でも、レベル2++は自動運転ではないと位置づけられています(出典:デジタル庁)。
興味深いのは、トヨタが自社開発のAIに、ルールにもとづく「ガードレール」を組み合わせると説明している点です。AIが想定外の動きをしたときに介入し、事故が起きたときの原因説明にも使うとしています(出典:Car Watch)。作る側も「AIは想定外の動きをすることがある」という前提で設計しているということです。
「見守る役」にも、運転の技能が要る
運転支援が上手になると、人間の出番は「見守ること」と「必要なときに代わること」になります。ところが、この2つは、自分で運転するより簡単とは限りません。
車が自分で走っている間、人は手を動かさない時間が長くなります。そして、機能が対応できない場面が来たとき、その短い時間で状況をつかみ、ブレーキやハンドルを操作しなければなりません。ふだん運転していない人ほど、この「代わる瞬間」が難しくなります。
機械が上手になるほど、人間に残る仕事は難しくなる。この逆説は、1983年に心理学者のリサンヌ・ベインブリッジが「自動化の皮肉(Ironies of automation)」という論文で指摘しています(出典:Bainbridge, 1983)。このテーマは、別の記事で詳しく書く予定です。
つまり、運転支援付きの車に乗る予定がある人にとって、練習は不要になるのではなく、「機能に任せていい場面」と「自分が代わるべき場面」を見分ける力として、形を変えて必要になると私たちは考えています。
今乗っている車も、これから買う車も、長く走る
もう一つ見落としやすいのが、車の入れ替わりの遅さです。乗用車(軽自動車を除く)の平均使用年数は13.35年です(2025年3月末、出典:自動車検査登録情報協会)。
新しい機能が発売されても、道路を走る車がすぐに入れ替わるわけではありません。家族の車、レンタカー、カーシェアなど、ペーパードライバーの方が実際に運転する車は、機能の有無や中身が車ごとにまちまちという状態がしばらく続くと考えられます。
運転手のいない車は、どこまで来ているか
アメリカでは、日常の移動手段になりつつある
Waymoは2026年3月時点で、米国の10都市で週50万回以上の完全自動運転の乗車を提供しています(出典:Waymo)。
テスラも2026年9月3日、ハンドルもペダルもない「Cybercab」の有償運行を米オースティンで始めました。ただし、認可された車両は45台で、エリアもオースティンに限られています(出典:Forbes)。
先行する都市でも「全部」にはなっていない
一方で、ロボタクシーが最も広がっている都市の一つ、サンフランシスコでも、配車サービスのすべてが置きかわったわけではありません。Waymoの配車市場でのシェアは、2026年6月時点の推計で15%、約25%とする報道もあります。料金はUberやLyftより13〜27%高いという報道もあります(出典:The Driverless Digest、同)。
また、スクールバス周辺での挙動が当局の調査対象になるなど、新しい技術ならではの課題への対応も続いています(出典:TechCrunch)。
運転手のいない車は、これまでの交通手段としばらく並んで走るというのが、先行する都市の今の姿です。
東京では、乗客を乗せるサービスはまだ始まっていない
2026年9月時点で、東京ではWaymoの乗客向けサービスはまだ始まっていません。港・新宿・渋谷・千代田・中央・品川・江東の7区で、日本交通の乗務員が同乗してテスト走行を行っている段階です(出典:Waymo、chasksite)。
ほかにも、日産・Wayve・Uberが2026年後半に東京でロボタクシーの試験運行を計画しており、当初はセーフティドライバーが同乗するとされています(出典:CarConnect)。
国の計画では、都市部のタクシーは2027年度に限定的に始め、2029年度にレベル4を本格化し、2030年度に全国へ広げるとしています(出典:デジタル庁)。
首都圏では、地域ごとに計画が進んでいる
国は2026年3月、自動運転サービスを先行して事業化する13地域を選びました(出典:国土交通省)。首都圏では、横浜市、川崎市、平塚市が含まれています。
- 横浜市:2027年度に都心部で一部レベル4の事業を始め、2028年度以降に郊外の交通空白地へ広げる計画です(出典:デジタル庁)。
- 川崎市:自動運転バスのレベル4を、2027年度に実装する予定です(出典:川崎市)。
- 平塚市:神奈川中央交通と、平塚駅南口から出る路線で実証を行っています。現在は、運転士がいつでも操作できる態勢のレベル2で走っています(出典:平塚市)。
国全体では、2030年度までに自動運転サービスの車両を1万台導入することを目指しています(出典:デジタル庁)。
ただし、どれも計画の段階です。新しい技術の導入は、実証の結果や地域の事情によって時期が前後することがあります。
講師としての見立て:変化は「地域ごとの階段」でやってくる
ここからは、ここまでの事実をもとにした講師としての見立て(予測)です。確かな未来ではないことを前提にお読みください。
見立て1:変化は、地域ごとに段差をつけて進む
自動運転は、日本中で一斉に広がるものでも、全体がゆっくり均等に進むものでもないと考えています。サービスが始まった地域から、階段を一段ずつ上るように変わっていく。そのため、「いつ運転しなくてもよくなるか」は、住んでいる場所によってかなり違ってきます。
見立て2:「もうすぐ要らなくなるらしい」が先に来る
ニュースで「自動運転」という言葉を見る機会が増えると、「もうすぐ運転しなくてよくなるらしい」という期待が先に広がります。でも、実際の生活で「運転できなくても困らない」と感じられるようになるのは、その後です。この2つの間には、数年のずれがあると見ています。
見立て3:高速道路は機械が先、住宅街の細い道は人間が長く担当する
車線がはっきりしていて歩行者のいない高速道路は、自動化が先に進みます。反対に、住宅街の細い道、駐車場、歩行者や自転車がすぐそばを通る場面は、人間が担当する時期が長く続くと考えています。
実際、テスラが東京で試験走行を行った際には、信号のない横断歩道での歩行者優先、漢字の標識、歩行者や自転車が混ざる住宅街の細い道が課題として挙げられています(出典:CarConnect)。ペーパードライバーの方が「怖い」と感じやすい場面と、機械が苦手な場面は、重なるところが多いと感じています。
ペーパードライバーにとっての「転換の時期」
以上をふまえて、ペーパードライバーの方にとっての時期を、次のように見立てています。
| 住んでいる地域 | 「もうすぐ要らなくなるらしい」と感じ始める時期 | 「運転できなくても困らない」と実感できる時期 |
|---|---|---|
| 都心 | 2027〜2029年ごろ | 2029〜2032年ごろ |
| 首都圏の郊外 | 2030〜2033年ごろ | 2033〜2038年ごろ |
首都圏の郊外は、横浜市の郊外への展開が順調に進めば、1〜2年早まる可能性もあります。また、車を持っていないペーパードライバーの方は、車の買い替えを待つ必要がないぶん、変化の恩恵を最も早く受けられる層だとも考えています。
逆に言えば、都心でもあと数年、郊外ならあと7〜12年ほどは「運転できると助かる」時期が続く、というのが私たちの見立てです。
「今練習する」か「待つ」か、判断の目安
今の練習が役に立ちやすい人
- 1〜2年のうちに、車を買う、借りる、家族の車を使う予定がある
- 子どもの送迎や、親の通院の付き添いで運転する可能性がある
- 郊外や地方への引っ越し、転勤の予定がある
- 仕事で運転が必要になりそう
- 運転支援付きの車を買う予定があり、機能を正しく使いこなしたい
急がなくてもよい人
- 都心に住んでいて、公共交通で困っていない
- 当面、自分で車を運転する予定がない
後者の方は、無理に今練習する必要はありません。必要になったタイミングで考えれば十分です。
「待つ」ことで変わること
判断の材料として、もう一つだけ知っておいていただきたいデータがあります。先ほどの三井住友海上の調査では、現在のペーパードライバーのうち73.3%が3年以上運転しておらず、10年以上という人が半数を超えていました。運転への自信は100点満点で平均25.4点。一方、ペーパードライバーを卒業した人の自信は平均60.4点でした(出典:三井住友海上火災保険)。
待つこと自体が悪いわけではありません。ただ、運転しない期間が長くなるほど、最初の一歩を重く感じる方は少なくありません。「待つ」を選ぶなら、それが自分の生活の予定と合っているかを、一度確かめておくと安心です。
講師としての見解:期待していること、心配していること
期待していること
運転支援の進化は、運転が怖いと感じている方にとって、心強い味方になると思っています。高速道路での長い運転の疲れが減れば、「遠出はあきらめていた」という方の行動範囲も広がります。
運転手のいない車が広がれば、車を運転できない方、運転をやめた高齢の方、公共交通の少ない地域に住む方の移動が楽になります。横浜市では市域の11%が交通空白地とされており(出典:デジタル庁)、こうした地域に新しい移動手段が届くことには、大きな意味があります。
心配していること
心配しているのは、「自動運転」という言葉への過信です。運転者が責任を持つ機能を「自動運転だから任せておけばいい」と受け取ってしまうと、見守る役目がおろそかになりかねません。
もう一つは、ふだん運転していない人ほど、機能の限界に気づきにくいのではないか、という点です。機能が苦手な場面を知らなければ、代わるべきタイミングもつかめません。これは講師としての懸念であり、今後の研究や実際の利用状況を見ながら考え続けたいと思っています。
講師としてお役に立てること
私たちサワムラガクのグループは、2013年から2025年までに累計52,125名の方に講習をご利用いただき、教習時間は156,375時間になりました。40〜50代の方や、ブランクの長い方の受講が多いのが特徴です。
運転支援が広がる時代でも、講師にできることはあると考えています。基本の操作に加えて、「どんな場面なら機能に任せやすいか」「どんな場面で自分が代わるべきか」を実際の道路で確かめること。それは、これからの時代に講師として大切にしたい視点です。
暫くは混在の時代です。混在の時代は「イレギュラーが多発する時期」でもあります。そして、人類は過渡期を必ず超えなくてはなりません。過渡期を上手に乗り切るためには、「AI(機械)が出来ない複雑な状況をカバー」してあげる必要があります。そのためには、運転技術の向上は、暫くは必須となります。「自動運転時代の過ごし方」は、今までとは別の難しさがありますが、不測の事態に対応するためにも基礎的な技術を身に付けておくことは大切です。我々も時代の変化に合わせて教習内容をカスタマイズし、その時代に必要なサービスを提供していきたいと思います。
よくある質問
Q. 運転支援付きの新しい車を買えば、練習しなくても運転できますか?
A. この記事で紹介した、これから数年で国内に登場予定の機能(トヨタ、日産、テスラ)は、いずれも運転者が責任を持つレベル2の範囲です。見守りや、必要なときの操作は運転者の役目なので、運転の技能は必要です。
Q. 事故が起きたら、責任は車のメーカーにありますか?
A. 一般論として、レベル2の運転支援を使っているときは、運転の主体は運転者です。レベル4の運転手のいない車とは、考え方が大きく異なります。実際の事故の責任は個別の事情によって判断されるため、具体的なケースは弁護士や保険会社などの専門家にご相談ください。
Q. 東京でロボタクシーに乗れるのはいつですか?
A. 2026年9月時点では、乗客向けのサービスはまだ始まっていません。国の計画では、都市部のタクシーは2027年度に限定的に始まる予定です。時期は今後の状況によって変わる可能性があります。
Q. 国の「優良認定」を受けた車なら、運転に自信がなくても大丈夫ですか?
A. 国土交通省は、レベル2++の優良認定制度を2026年中から年度内に創設することを目指していますが、技術要件の詳細はこれから決まる段階です(出典)。認定があっても、レベル2++である以上、運転者が責任を持つことに変わりはないと考えられます。
Q. 自動運転が広がったら、ペーパードライバー講習はなくなりますか?
A. 長い目で見れば、講習の形は変わっていくと考えています。ただ、この記事の見立てのとおり、「運転できると助かる」時期はしばらく続きます。この問いについては、当事者として別の記事でじっくり考える予定です。
出典一覧
すべて2026年9月11日に確認しました。
- 三井住友海上火災保険「ペーパードライバーに関する実態調査」(2023年3月31日)
https://www.ms-ins.com/news/fy2022/pdf/0331_2.pdf - Car Watch(トヨタのレベル2++導入発表)
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/2136234.html - 日産自動車 ニュースリリース(次世代プロパイロット)
https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/250922-01-j - Car Watch(日産の次世代プロパイロット)
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/2048978.html - ITmedia NEWS(テスラFSDの日本導入に関する発言)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2604/30/news114.html - デジタル庁 プロジェクトチーム提言(2026年6月16日)
デジタル庁 提言資料(PDF) - Bainbridge, L. (1983). Ironies of automation. Automatica, 19(6), 775-779.
https://doi.org/10.1016/0005-1098(83)90046-8 - 自動車検査登録情報協会「平均使用年数」(2025年)
https://www.airia.or.jp/publish/file/shiyounensuu_2025.pdf - Waymo「Waymo in Japan」
https://waymo.com/intl/jp/waymo-in-japan/ - chasksite(Waymoの東京でのテスト)
https://chasksite.com/archives/30759 - Forbes(テスラCybercabの運行開始)
Forbes 記事 - The Driverless Digest(サンフランシスコの配車市場シェア、料金)
https://www.thedriverlessdigest.com/p/uber-says-its-gaining-market-share
https://www.thedriverlessdigest.com/p/waymos-lead-is-real-its-biggest-test - TechCrunch(Waymoの利用状況と課題)
https://techcrunch.com/2026/03/27/waymo-skyrocketing-ridership-in-one-chart/ - CarConnect(東京でのロボタクシー試験運行の計画)
https://carconnect.jp/column/release/2026-autonomous-driving-taxi/ - CarConnect(テスラの東京での試験走行)
https://carconnect.jp/column/ev/tesla-autonomous-driving/ - 国土交通省(先行的事業化地域の選定)
https://www.mlit.go.jp/road/ITS/j-html/automatic-driving-social-result_r8.html - デジタル庁 モビリティワーキンググループ資料(各地域の計画)
デジタル庁 WG資料(PDF) - 川崎市 報道発表
https://www.city.kawasaki.jp/templates/prs/500/0000185331.html - 平塚市 報道発表
https://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/press/page02_e00001_03269.html - レベル2++の優良認定制度に関する記事(aba-j.or.jp)
https://www.aba-j.or.jp/info/industry/26512/
https://www.aba-j.or.jp/info/industry/27368/
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