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もう左折は怖くない。信号左折・完全攻略ガイド

はじめに|左折は「一つの技術」でクリアする項目ではありません

「左折が苦手」「巻き込みをやらないか不安」

運転から離れていた方や免許を取ったばかりの方からよく聞く言葉です。

この「苦手感」や「不安感」の中身は、実は人によって異なります。

ミラーに映る相手との距離が掴めていない方は、左後方の歩行者や自転車が怖かったりします。
車の操作に余裕がない方は、確認しながら全部やる(確認・ハンドリング・スピードコントロール・走行ライン・首振り)という、やることの多さで手一杯になってしまいます。
また、後ろから車に迫られるのがとても気になる。という方もいらっしゃるかと思われます。

つまり、「左折が怖い」という一つの症状の裏には、いくつもの違う原因があるということです。

だからこそ、「これさえやれば怖くなくなる」という特効薬は存在しません。

その代わり、はっきりしていることがあります。安全に左折できるようになるために必要な要素は、きちんと分解できるということです。

具体的には、この6つです。

  1. 見えていない場所(死角)を知っていること
  2. ミラーに映る相手との距離が掴めていること
  3. 合図のタイミングが安定していること
  4. 左に寄せられること、そして寄せる意味が分かっていること
  5. 曲がりながら、周りを見られること
  6. 速度と走行ラインを、同時にコントロールできること

一つずつ見ていけば、どれも決して難しいものではありません。難しく感じるのは、いきなり全てをやろうとしてしまうからです。

一気に上手くなろうとしなくて大丈夫です。一つずつ丁寧に積み上げていきましょう。


1.見えていない場所を、まず知る

最初にやることは死角の把握です

見えていない場所がどこなのかを知らないまま確認をしても、それは適切な確認にはなり得ません。まずは再確認しておきましょう。


運転席から見えている世界は、4つに分かれている

【図|教本スライド2】死角を把握しよう

車に座って周りを見たとき、その視界は実は4つの層に分かれています。

見え方
直接視野 ハッキリと認識できる
周辺視野 何となく見えている
ミラー ルームミラー・サイドミラーで見えている
死角 見えていない

「死角」という言葉自体は、教習所で必ず習うものですし、ご存知の方がほとんどだと思います。

ただ、言葉として知っていることと、適切に確認行動を行えているか?は、少し違います。

日常の運転の中で「死角はここからここまで」と改めて確認する機会は、そう多くありません。そして運転から離れている方にとっては「どの辺を見るんだっけ?」という状態になっているのが普通です。

もしも、ここが曖昧なままだと、確認する場所が実は違っていた。ということになりかねません。

逆に言えば、場所さえ決まっていれば、確認はぐっとやりやすくなります。 だから、最初にここをはっきりさせておきましょう。


まずは図の上で、「死角とは、ここのことだ」と場所として認識してください。しっかりと概ねの位置を把握しておきましょう。


実は、右側にはほとんど死角がありません

【図|教本スライド3】死角と確認方法

ここで、意外に思われることが一つあります。

右側には、ほとんど死角がないのです。

理由は単純で、運転席が右側にあるからです。体をひねれば右後方はかなり見えます。ルームミラー、サイドミラー、そして目視。この3つを合わせれば、右側はそれほど危険な状態にはなりません。

問題は左側です。

左側には、ルームミラーとサイドミラーだけでは捉えきれない、大きな死角が残ります。

そして、そこはまさに左折のときに自転車やオートバイが入ってくる場所です。

だからこそ、左後方の目視が、左折において最も重要な確認になります。ここを飛ばしてしまうと、他をどれだけ丁寧にやっても、穴が空いたままになります。

あなたに与えられた「3つの武器」

ここで、この先ずっと使う考え方を一つ持っておいてください。

ルームミラー、サイドミラー、目視。この3つは、ドライバーに与えられた3つの武器です。

なぜ「武器」なのか。理由は単純で、後ろの情報を得る手段が、これ以外に存在しないからです。

センサーやモニターが付いている車もありますが、それはあくまで補助です。基本はこの3つ。使えるものはこれだけ。

そう考えると、左折という行為の輪郭がはっきりしてきます。

3つの武器を使って、死角をカバーする。 これが、あなたに課されたミッションです。

この先、確認のやり方がいくつか出てきますが、どれも「この3つをどう使うか」という話です。武器は3つ。目的は、死角を埋めること。 ここを押さえておくと、一つひとつの動作が何のためにあるのかが見えてきます。

ミラーを「見続ける」のは、逆に危険です

もう一つ、必ず押さえてください。

一箇所を見続けるより、あちこちを見て回れたほうが、はるかに安全です。

確認とは、結局のところ、右を見て、左を見て、ミラーを見て、また前を見て……という動作の繰り返しです。ひとことで言えば「キョロキョロする」ということです。

気をつけたいのは、不安があると、サイドミラーに視線が長くとどまりやすいという点です。ミラーを見ている間、前方からは目が離れています。

ミラーを長く見ているほど安全になる、というわけではないのです。短く、何度も、あちこちを見る。これが確認の基本の形です。

「さっき見たときはいなかった」は、根拠になりません

【図|教本スライド4】死角の特徴

死角には、知っておくべき性質があります。

すぐ近くにいる相手はサイドミラーに映るのに、その相手が横にずれて少し離れると、ミラーから消えてしまう。

これは、実際に見ていただくのが一番早いです。同じ人が、横に移動して距離を取っただけで、サイドミラーの中から忽然と消えます。

近づいてくるから見えるようになる、というより、位置関係によって、突然消えるのです。

だから目視が必要になります。

「さっきミラーで見たときは、誰もいなかった」は、安全の根拠になりません。 その相手は、消えているだけかもしれないからです。

もし可能であれば、実際の車で試してみてください。誰かに立ってもらって、位置を変えながら運転席から見えるかどうかを確かめる。図で理解するのと、自分の目で「消えた」を体験するのとでは、身につき方がまったく違います。


2.ミラーの中の「何メートル」を掴む

死角の場所が分かりました。次は、そこに映った相手が、どのくらい離れているのかです。

ここは、この記事の中でも特に時間をかけていただきたい部分です。

距離感がないと、何が起きるか

たとえば、こういう場面です。

ミラーに歩行者が映りました。でも、その人が12メートル後ろなのか、4メートル後ろなのかが分からない。

12メートルは車およそ3台分。かなり距離があります。一方、4メートルは車1台分です。同じ「映っている」でも、この2つは状況としてまったく別物で、取るべき判断も変わってきます。

距離が読めないと、この判断ができません。結果として、必要以上に慎重になることもあれば、近くにいる相手を遠いと見てしまうこともあります。

原因は共通していて、ミラーの中の映像と、現実の距離が結びついていないということです。

そして、ここが大事なところなのですが、これは度胸や慣れの問題ではありません。情報として持っているかどうかの問題です。

つまり、知れば解決します。

まずは、基準の映像を頭に入れる

【図|教本スライド5】ミラー距離感を掴もう

出発点は、基準を持つことです。

0メートル、4メートル、8メートル、12メートル。それぞれの距離にいる相手が、ミラーにどう映るのか。

これを見て、「このくらいの大きさで映っていたら、だいたい8メートルくらい」という当たりを付けられるようにします。

車の長さでの換算も、あわせて覚えておくと便利です。だいたい車1台が4メートル前後なので、そこを目盛りにできます。

練習1|距離と「判断」をセットにする

ただ、映像を眺めるだけでは身につきません。距離と判断をくっつける作業が要ります。

こんな問いを、自分に、あるいは同乗している方に出してもらってください。

4メートルのところを、30代くらいの女性が歩いています。横断歩道を渡りそうな素振りを見せています。あなたは左折しますか? 止まりますか?

12メートルのところを、ご高齢の方がゆっくり歩いています。行きますか? 止まりますか?

距離が変わるだけで、答えが変わります。それを確認するのが目的です。

一番判断が分かれるのは、8メートル付近です。 車およそ2台分。

ここに小走りの人がいれば、当然止まります。でも、ゆっくり歩いている方であれば、先に行っていい場面もあります。相手の年齢、歩く速さ、視線の向き。条件が少し変わるだけで答えがひっくり返る、絶妙な距離です。

正解を一つに決める必要はありません。 距離によって答えが変わるという事実を、体で覚えることが目的です。この微妙なラインを何度も考えるうちに、距離と判断が結びついていきます。

練習2|車を降りて、答え合わせをする

そして、最も効果があるのがこの方法です。

実際に車を降りて、確かめる。

やり方はいたって簡単です。

  1. 安全に停車できる場所で、同乗者に車の後方のどこかに立ってもらう
  2. 運転席から、ミラー越しに「今、何メートルくらいでしょう」と予想する
  3. 車を降りて、実際にそこまで歩いて確かめる

たったこれだけです。

大事なのは、運転席から見えていた世界と、外に出て見た現実を、突き合わせるという点です。

「あぁ、あの映り方で、これだけ離れているのか」

この答え合わせを何度か繰り返すと、運転席の中の感覚と、外の現実がつながっていきます。

逆に言えば、この作業をやらずに正確な距離感を掴むのは、かなり難しいと思います。ミラーをただ眺めているだけでは、映像はいつまでも現実と結びつきません。

ゲーム感覚で構いません。ここに時間をかけた分だけ、この先の左折が確実に楽になります。


3.ウインカーは、いつ出せばいいのか

見る力の土台ができました。ここからは、実際の動きに入っていきます。

基準は「30メートル手前」

【図|教本スライド7】30メートル手前のタイミング

合図(ウインカー)を出すタイミングは、曲がる地点のおよそ30メートル手前です。

これは道路交通法施行令で定められている基準でもあります。左折・右折の合図は、その行為をしようとする地点から30メートル手前に達したときに出す、とされています。

30メートルというのは、車およそ7〜8台分。思っているより、ずっと手前だと感じる方が多いはずです。まずは図で、この距離感を掴んでおいてください。

「ちょうどで出す」より「もう出ている」

実際の運転で意識していただきたいのは、この形です。

30メートルの地点で、ウインカーが「もう出ている」状態を作ること。

「30メートルちょうどで出す」ではなく、「30メートルの時点では、すでに出ている」。

この違いは、思っている以上に大きいです。

ちょうどで出そうとすると、その一点に間に合わせるための緊張が生まれます。距離を測ることに気を取られて、肝心の周囲の確認がおろそかになってしまっては本末転倒です。

一方、「その地点ではもう出ている」を目標にすれば、自然ともっと手前から準備を始めることになります。 結果として、余裕を持って基準を満たせます。

そして実は、この「手前から始める」という感覚こそが、次の章で扱う確認をぐっとラクにしてくれます。

補足|進路変更の合図は「3秒前」

なお、車線変更などの進路変更については、基準が異なり「進路を変えようとする約3秒前」と定められています。左折・右折の30メートルとは別の規定です。

ただ、実際の運転では、左折のために左へ寄せる動作は「左折の準備」として一続きになっています。あまり切り分けて考える必要はありません。とにかく手前から余裕を持って始める。 実用上は、この一点に集約されます。

ついでに|右折レーンがある交差点

【図|教本スライド8】右折分岐のタイミング

左折の記事ですが、合図の話なのでここで触れておきます。

右折レーンがある交差点では、「分岐」の手前でウインカーが出ている状態がベストです。

そして、そのまま手前の線に沿って、素直に右折レーンへ入っていく。これが理想の形です。

なぜここを強調するかというと、ある程度左車線を進んでから右へ移ろうとすると、後続車と進路が交差してしまうからです。危険ですし、迷惑にもなります。

これは判断力の問題というより、習慣の問題です。放っておくと、当たり前のようにやってしまうようになります。「分岐の手前で右ウインカー、そのまま右折レーンへ」を、癖として固めてしまうのが確実です。


4.「寄せる」の本当の意味

さて、ここからが左折の準備動作です。

進路変更とは、車線を変えることだけではありません

【図|教本スライド10】進路変更とは?

進路変更とは、同じ車線の中で「あらかじめ寄せておく」という行為です。

車線をまたいで移動することだけが進路変更ではありません。左折するときに、同じ車線の中で左側へ寄せておく。これも立派な進路変更です。

原則は、シンプルです。

曲がるときは、寄せてから曲がる。

左折なら左へ。右折なら右へ。

寄せることには、2つの意味があります

1つめは、巻き込みを防ぐこと。

車と縁石の間に隙間があると、そこに自転車やオートバイが入ってきます。あらかじめ寄せておけば、そもそも入る余地がなくなります。危険を「避ける」のではなく、危険が生まれる場所そのものを消してしまうという考え方です。

巻き込みは、起きてしまったときの被害が大きくなりやすい事故です。だからこそ、発生する余地を先に潰しておく。この考え方には、それだけの重みがあります。

2つめは、後ろの車に抜いてもらうこと。

寄せることができれば、後ろの車は追い越していってくれます。結果として、後ろから迫られるプレッシャーが軽くなります。

これは寄せることの副産物ですが、実際に運転していると、この効果は決して小さくありません。急かされない状況を、自分で作り出せるということですから。

「原則」と書いているのには、理由があります

先ほど「原則」という言葉を使いました。これは意図的です。

道路には、それぞれの事情があります。何でもかんでもグッと寄せればいい、というものではなく、状況に応じて緩めたり、やめたりする判断が必要になります。だから「必ず」ではなく「原則」なのです。

具体的にどんな場面で緩めていいのかは、この章の後半でお伝えします。

実は、寄せることより難しいこと

ここが、多くの方がつまずくポイントです。

寄せたら、離れてはいけません。寄せたまま、真っ直ぐ進みます。

寄せること自体より、寄せた状態を保って真っ直ぐ走ることのほうが、はるかに難しい。

寄せた直後に、じわじわと元の位置へ戻っていってしまう。ハンドルを戻す量はごくわずかなので、走っている本人からは気づきにくい部分でもあります。

「①寄せたあと、②つかず離れず、まっすぐ進む」

先に知っておいてください。これは最初はできなくて当たり前です。 難しいと分かったうえで取り組むのと、できない自分を責めながら取り組むのとでは、上達の速さがまるで違います。

確認の手順

【図|教本スライド11】確認の基本手順

左折で寄せるときの、基本の流れです。

  1. ルームミラーとサイドミラーで、後方の状況を把握する
  2. ウインカーを出す
  3. (ひと呼吸おく)
  4. サイドミラーと目視で死角を確認し、左後方の安全を確定させる
  5. 寄せる

まず1と2で、ひと区切り。ここは走りながらやります。いつも見ているミラーで後ろを確認して、問題がなければウインカーを出す。それだけです。

そしてひと呼吸おいて、3と4。サイドミラーと目視で、左後方に誰もいないことを確定させる。確定したら、寄せる。

なぜ、この順番なのか

この形には、経緯があります。

以前は、逆の順番をとっていました。「まず合図を出して、そのあと1・2・3と3段階で確認する」という手順です。これは確かに簡単で、初めての方でもすぐにできました。

ところが、欠点がありました。

ミラーを見ていない時間が、長くなってしまうのです。

合図を出してから確認をまとめて行うため、その間、後ろの状況が把握できていない空白の時間ができる。これは安全上、見過ごせません。

そこで、確認を前後に分ける今の形になりました。先に後方の状況を掴んでから合図を出し、ひと呼吸おいて、もう一度確定させる。空白の時間を作らないための構成です。

一気に繋げようとしないでください

ここで、実践上の大事な注意があります。

この動作を1・2・3・4と全部つなげて、一気にやろうとすると、途端に難しくなります。

慣れない動作をまとめて実行しようとすると、それだけで処理が追いつきません。焦って雑になり、結局どれも中途半端になる。

対策は、拍子抜けするほど単純です。

交差点の、かなり手前から始めること。

走りながら、早い段階で後ろの確認をしておく。誰もいなければ、もうウインカーを出してしまう。そこから二呼吸ほど置いて、サイドミラーと目視。いなければ寄せに入る。

こうして手前から余裕を持って始めれば、慌てずに一つずつ処理できます。動作そのものが難しいのではなく、時間がないから難しくなっているのです。

【最重要】この手順は、何のためにあるのか

そして、ここがこの章で一番お伝えしたいことです。

この一連の動作は、「後ろの状況を把握する」ためにあります。

手順は目的ではなく、目的を達成するための道すじです。

ルームミラー、サイドミラー、目視。3つの武器を使って、「ここには誰もいない」を確かめる。 それが、この手順が果たそうとしている仕事です。

なぜ、わざわざこんなことを書くのか。

動作に慣れないうちは、順番を思い出すことに意識が向きがちだからです。次は何だったか、と考えているあいだ、ミラーは見ていても情報としては入ってきません。動作は手順どおりなのに、肝心の状況が掴めていない。そういうことが起こり得ます。

ですから、一つひとつの動作をやりながら、そのつど確かめてみてください。

今、後ろの状況を把握できているか?

ミラーを見る。誰もいないことを確かめる。合図を出す。ひと呼吸おく。もう一度、目視で確かめる。寄せる。

動作を「こなす」のではなく、そのたびに情報を取りにいく。 そう意識すると、同じ手順がまったく違う意味を持ちます。

最初から流れるようにできなくて大丈夫です。一つずつ、確実に。 そのほうが、結果的に早く身につきます。

どのくらい寄せればいいのか

【図|教本スライド12】寄せる幅の目安

目安は、3つです。

  • 排水溝に入らない程度に寄せる
  • 白線を踏まない程度に寄せる
  • 人が通れない程度に、隙間を埋めておく

3つめが目的で、1つめと2つめは、そのための具体的な目印です。

人が通れる隙間が空いていれば、自転車もオートバイも通ります。逆に、そこが埋まっていれば、巻き込みの余地はなくなります。

「白線の中には入らない」で十分です

白線の中まで入れて曲がる、という話をどこかで聞いたことがあるかもしれません。ですが、少なくとも今の段階では、その必要はありません。

理由があります。

白線の中に入るとなると、「車道外側線」と「路側帯」の見極めをしなければならなくなるからです。

この2つは見た目がよく似ていて、間違えると歩行者の通行帯に入ってしまいます。この判別を、運転に慣れないうちから毎回きっちりやるのは、負担が大きすぎます。

そして現実問題として、線の中まで入って曲がっている車は、ほとんど見かけません。

であれば、「白線の中には入れない程度に寄せる」という一つのルールで十分です。シンプルな決まりを一つ守るほうが、複雑な判断を毎回するより、ずっと確実です。

狭い道路の場合|「できる限り」の意味

【図|教本スライド13】狭い道路では無理に寄せない

「原則」と書いた理由が、ここです。

道路交通法でも、左折の際は「できる限り道路の左側端に寄る」と定められています。この「できる限り」という言葉が、そのまま答えになっています。

もともと道幅が狭く、すでに十分に左側を走っている道路では、そこからさらに寄せる余地はほとんどありません。

そういう場所で無理にハンドルを左へ向ければ、かえって左側に接触する危険が生まれます。それでは本末転倒です。

判断の基準は、「寄せることに意味があるか」です。

寄せる目的は、巻き込みを防ぐことと、後ろの車に抜いてもらうこと。道幅が足りずに後続車が抜けない道路では、そもそも後者は成立しません。自転車が横をすり抜けられる幅がなければ、前者の状況も変わってきます。

その道路の状況に合った位置を走る。 それで十分です。狭いところできれいに寄せられなかったからといって、気に病む必要はまったくありません。

知識として|車道外側線と路側帯の違い

先ほど名前が出たので、整理しておきます。実際の運用は「線の中に入らない」で十分ですが、違いを知っておくと理解が深まります。

歩道がない道路の場合。 人が歩ける場所は、線の外側しかありません。この外側を路側帯といい、歩行者のための場所です。ここに車が入ってはいけません。

歩道がある道路の場合。 人が歩く場所は、歩道として別に確保されています。この場合の線は車道外側線といい、内側・外側に通行区分としての意味はありません。入っても差し支えないものです。

つまり、歩道があるかないかで、同じように見える白線の意味が変わるということです。

ただ、繰り返しになりますが、実際の運転では「線の中に入らない」で統一して構いません。覚えていただきたいのは違いがあるという事実であって、毎回判定することではありません。

実際の動きを、映像で

ここまでの流れを、映像で確認してください。

【映像|教本スライド14】進路変更(映像見本)

※映像内の「目視」は、分かりやすくするために意図的に大きく動かしています。実際にここまでオーバーに動かす必要はありません。


5.ここからが本題です|左折の安全を支えているもの

ここまで、寄せ方を丁寧に見てきました。合図を出し、後方を確認し、左に寄せる。ここまでできれば、左折の準備は整っています。

そのうえで、これからお話しするのが、この記事で一番大事な部分です。

準備が整うことと、安全に曲がれることは、別の話です

少し考えてみてください。

ここまでの動作は、すべて「曲がる前」に行うものです。合図も、確認も、寄せることも、ハンドルを切る前に完了しています。

一方で、左折で接触が起きるのは、「曲がっている最中」です。

このあいだには、時間の隔たりがあります。

そして左折には、他の場面にはない特徴があります。

曲がりながら、周りの状況が変わり続ける。

歩行者は歩いてきます。自転車は近づいてきます。車の向きが変わることで、見える範囲そのものも刻々と変わっていきます。

つまり、曲がる前にどれだけきちんと準備をしても、その時点で確認した安全が、曲がり終わりまで続くとは限らないということです。

準備は、危険を減らすための大切な工程です。手を抜いていいものではありません。

ただ、準備だけで左折が完結するわけではない。本番は、曲がっている最中にあります。

では、何が安全を支えているのか

では、曲がっている最中の安全は、いったい何が支えているのでしょうか。

これは本当に重要な問いなので、ぜひご自身の頭で考えてみてください。

答えは、これです。

曲がりながら、足元で速度を管理し、手で走行ラインを取り、同時に首を振って周りを見ていること。

この3つが、同時に動いている状態です。

足でスピードを管理しながら、手でハンドルを操作しながら、目で周囲を確認する。どれか一つが止まると、残りも崩れます。

逆に、この3つのバランスが取れていれば、状況が変化しても、その変化に合わせて対応できます。曲がり始めに見えなかったものが見えてきても、ちゃんと拾える。

この記事では、これを「複合動作」と呼ぶことにします。

左折の安全を最終的に支えているのは、この複合動作です。

だから、目指すのはここです

ここまで来ると、話がはっきりします。

準備の動作は、これまでの章でお伝えしたとおり、丁寧にやってください。一つひとつに、ちゃんと理由があります。

そのうえで、同じくらい、いやそれ以上に時間をかけていただきたいのが、この複合動作です。

ブレーキをかけながら、ハンドルを入れながら、周りを確認できる。曲がる前でも、曲がっている最中でも、どんな体勢でも、足元で速度を管理しながら安全確認ができて、手は正しいラインを取っている。

ここが身につくと、左折そのものが安定します。

そして、この力は左折だけのものではありません。右折でも、車線変更でも、駐車場でも、あらゆる場面で効いてきます。運転全体の土台になる部分です。

ここから先は、そのための話です。


6.曲がりながら、見る

見る場所は、3つだけ

【図|教本スライド16】信号左折・トレーニング

左折で見るべき場所は、シンプルです。

  1. 歩行者
  2. 巻き込み
  3. 周辺の経過観察

言い換えれば、左後方に危険があるのかないのか。横断歩道の周りに危険があるのかないのか。 それを把握することが目的です。

見る場所というのは、あくまで状況を把握するための手段です。場所を覚えること自体が目的ではない、という点だけ頭の隅に置いておいてください。

身につけたい、たった一つの技術

前の章でお伝えしたとおり、左折は曲がりながら状況が変わり続けます。

だからこそ、目指すのはこれです。

曲がりながら、左右の確認ができること。

足元でスピードをコントロールしながら、手でハンドルを操作しながら、顔を左右に振れる。この組み合わせが、この記事で一番身につけていただきたいポイントです。

首を振るといっても、大きく動かす必要はありません。目的はあくまで周りの状況を掴むことなので、必要なぶんだけ、必要な方向を見れば十分です。

見るのは、危険が「ある」か「ないか」

確認するときに掴んでほしいのは、たった一つです。

危険が「ある」か「ないか」。接触する相手が「いる」か「いないか」。

きれいに見ることでも、たくさん見ることでもありません。この判断ができる情報が取れているか。 そこに集中してください。

そして、これができるようになると、左折はぐっと安定します。状況が変わっても、変わったことに気づけるからです。


7.速度は、どこで落とすのが正しいのか

ここは、読むと納得感が高い部分だと思います。理解すると、左折の速度の付け方が根本から変わります。

起こりやすい速度の付き方

左折では、こういう速度の付き方になりやすい傾向があります。

横断歩道の手前までが遅く、曲がり始めてからが速い。

そして、これはとても自然に起こることです。理由が2つあります。

手前が遅くなる理由。 これから左折すると思うと、その行為自体に身構えてしまうからです。曲がることを意識した瞬間に、自然とアクセルがゆるむ。無理もないことだと思います。

曲がり始めてから速くなる理由。 緊張する場面は、早く通り抜けたくなるからです。アクセルを踏んでいるわけではないのでスピードそのものが上がるわけではないのですが、必要な減速がされないまま、その速度のまま曲がっていくことになります。

どちらも、気持ちとしてはとてもよく分かる反応です。

ただ、この配分は、実際の危険の分布とちょうど逆になっています。 なぜそう言えるのかを、次に説明します。

なぜ「逆」なのか──接触の仕組みから考える

【図|教本スライド17】信号左折・接触のメカニズム

理由を、接触の仕組みから説明します。

左折での接触は、ハンドルを曲げてから起こります。

  • 接触パターン① オートバイ・自転車(巻き込み)
  • 接触パターン② 歩行者

どちらも、ハンドルを切って車体が左を向き始めてから発生します。

ということは、逆に考えてみてください。

ハンドルを曲げるまでは、接触しません。

横断歩道に至るまでの直進区間では、まだハンドルを切っていません。つまり、この区間は相対的に安全なのです。

そしてハンドルを切って曲がっていく区間。ここが、危険なゾーンです。

だから、こう走ります

したがって、正しい速度の付け方はこうなります。

横断歩道の手前までは、遅すぎないこと。

周りと同じような速度感覚で、すーっと進みます。ここで極端に遅いと、後ろから迫られる原因になります。安全な区間で不必要に遅く走ることに、メリットはありません。

曲がる区間では、しっかりと速度を落とすこと。

何があるか分からない区間です。ここは徹底して落とします。

このメリハリをつけること。それが、左折の速度コントロールの答えです。

「遅くていい」と、みんな思っています

ひとつ、安心していただきたいことがあります。

曲がる区間で遅いことについては、「危険なところなんだから、遅くて当然だ」という共通認識が、ドライバーの間にあります。

あなただけが遅いわけではありません。周りの車も、そこは遅くていいと思って見ています。

だから遠慮せずに、しっかりスピードを落として、確認しながら進んでください。

後ろが気になって曲がる区間を速く抜けようとするのは、最も危険な場所を、最も速く走るということです。落とすべきところで落とす。それが結果的に、周りの期待にも沿った走り方になります。


8.走行ラインと、3つの同時意識

意識するのは、前輪ではなく「後輪」です

【図|教本スライド18】走行ライン・トレーニング

交差点の角には、丸みを帯びた縁石がありますね。あの丸み(R)が基準になります。

正しい走行ラインは、「後輪」が「縁石のR」に沿って曲がっていきます。

もう少し具体的に言うと、左後輪が、縁石と一定の間隔を保ったまま並んでいくイメージです。

ポイントは、前輪ではなく後輪だということ。

車は、後輪のほうが内側の軌跡を通ります。だから前輪の感覚で曲がると、後輪が縁石に寄りすぎたり、それを避けようとして逆に大きく膨らんだりします。

後輪を意識できるようになると、ラインがぐっと安定します。

目・手・足の、3つの同時意識

そして、ここが第5章で書いた「複合動作」の中身です。

速度を調整しながら、走行ラインも保つ。 これを成り立たせるには、3つの同時意識が欠かせません。

  • (情報収集)
  • (ハンドル操作)
  • (ペダル操作)

この3つが同時に動いている状態を作ります。

最初に飛ぶのは、いつも「足」です

では、3つのうち、どれが最初に飛んでしまうか。

足元です。

同時意識の最大のポイントは、「足元意識」が保たれているかどうかにあります。

周りを見ることに意識が向くと、真っ先に足元の意識が抜けます。ブレーキの加減が大まかになり、速度が思うように調整できなくなる。逆に、ハンドル操作に集中しているときも同じことが起こります。

うまくいかないと感じたときは、まず足元を疑ってください。

足元の意識が残っているか。ここが崩れていると、他をどれだけ意識しても安定しません。逆に言えば、足元さえ生きていれば、たいていの状況は立て直せます。


9.「逆フリ」をやめる

最後の項目です。

逆フリとは

【図|教本スライド19】逆フリに注意!

逆フリとは、左折の前に一度右へ膨らんでから曲がる動作のことです。街中でよく見かけます。

原則は、はっきりしています。

必要のない逆フリは、やめましょう。ハンドルは「まっすぐ」から「曲げる」だけです。

隣のレーンに膨らめば、そこを走ってくる車の迷惑になります。危険でもあります。

そして、この逆フリには2つのタイプがあり、それぞれ対処法がまったく違います。

タイプ1|自覚がある場合

「そのほうが曲がりやすいと思ってやっていた」 「そうやっている人がいるから、真似していた」

自分でやっていると分かっている場合、対処は簡単です。

なぜ避けたほうがいいのかが分かれば、直ります。 隣のレーンに膨らめば、そこを走ってくる車の進路と重なってしまう。理由が腑に落ちれば、意識してやめることができます。意識してやっていたことは、意識してやめられるのです。

ただし一点、注意があります。

この裏に、左側の車両感覚の不足や、思い込みが隠れていることがあります。「左が当たりそうで怖いから、大きく膨らんでいた」というケースです。

この場合、逆フリだけを直そうとしても解決しません。なぜ膨らみたくなるのかという、原因のほうにアプローチする必要があります。左側の感覚を掴む練習に、いったん戻ってください。

タイプ2|無意識にやってしまう場合

問題は、こちらです。根が深いのは、このタイプです。

「気づいたらやっていた」 「言われるまで、自分でも分からなかった」

無意識に出てしまう行動は、「気をつけよう」と思うだけでは直りません。

意志の力で無意識を書き換えるのは、そもそも簡単なことではないのです。実際、多くの方が「直そうと思っているのに直らない」と悩まれます。これはご本人の努力不足ではありません。やり方が合っていないだけです。

では、どうするか。

対策は、たった一つです。

その場面に差し掛かる「前」に、意識に上げること。

無意識のまま突入するから、無意識の行動が出ます。であれば、行動が始まる前に、意識の側へ持ってくればいい。

具体的には、曲がる手前で、ひとこと。

「はい、逆フリしない」

これだけです。長い説明はいりません。たったひとことを、曲がる前に言えるかどうか。

そして、毎回やることです。

一度で身につくものではありません。信号のたびに、交差点のたびに、同じ場面で何度も繰り返す。「この場面では、これをやらない」という意識づけを反復していく。

繰り返すうちに、それが定着していきます。そして最終的には、その意識づけのほうが自然な動きになっていきます。

一人で練習するときは、声に出してください。 同乗者がいるなら、曲がる手前でひとこと言ってもらうのが最も効果的です。

そして大事なのは、指摘してもらうのは「やってしまった後」ではなく、「やる前」だということ。やった後の指摘では、意識に上げるタイミングを逃してしまっています。

これが、無意識の逆フリを直す、ほぼ唯一の方法です。


実際の左折を、映像で

ここまでの内容が、実際にどう組み合わさるのか。映像で確認してください。

【映像|教本スライド20】信号左折(映像見本)

※首を振る目的は、周りの状況を把握することです。回数や速さは、状況に応じて調整してください。「首を振ること」そのものが目的ではありません。


おわりに|順番に、一つずつ

長くなりましたが、振り返ってみると、やっていることは案外シンプルです。

見えていない場所を知る。 右にはほとんど死角がなく、左に大きな死角が残ること。それをルームミラー・サイドミラー・目視という3つの武器で埋めること。

距離を掴む。 ミラーに映る相手が何メートル先にいるのか。車を降りて答え合わせをしながら、感覚と現実をつないでいくこと。

合図を安定させる。 基準は30メートル手前。ただし「ちょうどで出す」ではなく「その地点ではもう出ている」状態を作ること。

寄せる意味を知る。 巻き込みを防ぎ、後ろの車に抜いてもらう。確認の手順は、そのために「後ろの状況を掴む」ための道すじです。

曲がりながら、見る。 左折は曲がりながら状況が変わります。だから、変化している最中に見られること。ここが最重要です。

速度とラインを、同時に扱う。 手前は流れに乗り、曲がる区間でしっかり落とす。後輪を縁石に沿わせる。そして、足元の意識を切らさない。

特別なことは、何一つありません。

そして、どれか一つだけが飛び抜けて上手くなる必要もありません。すべての要素を、一定の水準まで引き上げていくこと。 それが結局のところ、一番確実な近道です。

一度に全部やろうとしなくて大丈夫です。

今日は死角の場所を図で確かめる。次は、車を降りてミラーの距離を当ててみる。その次は、交差点の手前から早めにミラーを見る癖をつけてみる。

そうやって、一つずつ潰していきましょう。

焦らなくて大丈夫です。順番にやっていけば、必ずできるようになります。

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