「レベル2++」は自動運転ではない:トヨタ2028年・日産2027年度の新型車を正しく理解する
執筆:沢村秋岳
2026年9月時点の情報です(最終確認日:2026年9月14日)
この記事で考えたいこと
2026年8月27日、トヨタが「2028年からレベル2++の自動運転機能を導入する」と発表しました。日産も、AIを使った次世代のプロパイロットを2027年度に国内の市販車へ搭載する予定を公表しています。
見出しだけを読むと、あと1年か2年で「自動で走る車」が販売店に並ぶように思えます。
ところが、どちらも制度の上では自動運転ではありません。運転しているのは人で、事故が起きたときの責任も人にあります。「自動運転」という言葉が使われていても、中身はレベル2の運転支援です。
この記事では、2つの発表が実際には何を指しているのか、そして運転から離れている人にとってどういう話なのかを、2026年9月時点で分かっている範囲で整理します。
先に結論
トヨタが2028年に出す機能も、日産が2027年度に出す機能も、制度上の区分はレベル2です。走行中は人が周囲を見張り、必要なときにはすぐ運転を代わる前提で作られています。
どちらも、運転できる人が乗ることを前提にした機能です。
一方で、できることは確実に広がります。これまで高速道路が中心だった支援の範囲が、市街地の一般道まで届くようになります。渋滞、合流、車線変更、駐車といった、苦手だと感じる人が多い場面ほど楽になる方向です。
「運転しなくてよくなる」のではなく、「運転の負担が減る」。今回の2つの発表は、そう読むのが正確です。
そもそも「レベル2++」は正式な区分ではない
自動運転のレベルは、SAEという国際的な団体が定めたレベル0から5までの6段階が基本になっています。この中に「レベル2+」も「レベル2++」もありません。
レベル2の中でも支援できる範囲が特に広いものを区別するために、使われるようになった呼び方です。国土交通省は、レベル2++を「ドライバーの関与をほぼ必要としない高度な運転支援」と位置づけています(出典:日本自動車会議所)。
デジタル庁のプロジェクトチームが2026年6月にまとめた提言でも、レベル2++は自動運転ではないものとして整理されています(出典:デジタル庁)。
つまり「レベル2++」という言葉自体が、レベル2であることを前提にして付けられた名前です。数字の上では3に近づいて見えますが、制度の上では2の中に収まっています。
レベル2とレベル3の間にある段差
国土交通省の「自動運転車の安全技術ガイドライン」では、レベルごとに「安全運転に係る監視・対応主体」が決められています。レベル0からレベル2までは運転者、レベル3以上はシステムです(出典:国土交通省)。
ここが一番大きな段差です。レベル2のままである限り、支援の範囲が高速道路から市街地へ広がっても、夜間や雨の日に上手に走れるようになっても、この欄は動きません。
レベル3になって初めて、システムが作動している間、運転者は前方から目を離してよいことになります。ただしレベル3でも、システムから「代わってください」と求められたときには、運転を引き継ぐ必要があります。
レベル2++がどれだけ上手になっても、それはレベル3の一歩手前ではなく、レベル2の中での進歩です。
トヨタが2028年に出すもの
トヨタは2026年8月27日、レベル2++の運転支援機能を2028年から導入すると発表しました(出典:Car Watch)。高速道路だけでなく一般道を含め、目的地までほとんど操作がいらない水準を目指すとしています。
技術の中心はE2E(エンドツーエンド)と呼ばれる方式です。カメラなどが捉えた情報から、認知、判断、車両の操作までを1つのAIが一貫して行います。人間の膨大な走行データを学習し、車線変更や合流、交差点の通過、歩行者や自転車が混ざる場面でも自然な走り方を作ることを狙っています。
同時に、あらかじめ決めた交通ルールに沿って車の動きを抑える「ガードレール」を組み合わせます。AIが危険な動きを見せたときに強制的に介入し、事故が起きたときには作動状況の記録から原因を調べられるようにする仕組みです。
一部の高級車からではなく、普段使いの量販車から優先して載せる方針も示されています。2030年以降に対象車種を広げる計画です(出典:NOVAIST)。
ここで混同しやすいのが、同じ日に説明された商用シャトルの話です。こちらは2030年までに完全自律の技術開発を進めてレベル4を目指すとしており、Waymoと組んだロボタクシー事業への参入も検討する、という内容でした。
つまりトヨタの発表は、「個人が買う車はレベル2++」「サービス用の車はレベル4を目指す」という2本立てです。報道では2つが混ざって伝わることがあるので、どちらの話かを見分けると理解しやすくなります。
日産が2027年度に出すもの
日産は、次世代のプロパイロットを2027年度に国内の市販車へ搭載する予定です。英国のWayveが開発したAIソフトウェアと、次世代LiDARを使った「Ground Truth Perception」という認識技術を組み合わせています(出典:日産自動車)。
2025年9月には、東京・銀座の一般道で、日産アリアをベースにした開発試作車がハンドルから手を放したまま走るデモンストレーションが公開されました。都心の複雑な道で、経験を積んだドライバーのように走ったと紹介されています。
注目したいのは、日産自身がこの技術について「自動運転SAEレベル2」と書いていることです。運転席に人が座って監視する必要があること、常に車両を制御し交通状況を監視する責任があること、道路や交通の状況に応じてすぐ手動に切り替える準備が要ること、すべての天候や道路で機能するわけではないことが、あわせて明記されています(出典:日産自動車)。
手を放して銀座を走る映像と、この注記は、同じ1つのものについての説明です。映像のほうが強く記憶に残りますが、実際に購入したときに付いてくるのは後者の条件のほうです。
国の「優良認定制度」で何が変わるか
国土交通省は、レベル2++の車を対象にした優良認定制度を作る準備を進めています。国が技術の優良性を認めることで、購入を検討する人に安心感を持ってもらうことが目的とされています。技術要件の詳細をこれから詰め、2026年中の創設を目指す段階です(出典:日本自動車会議所)。
2026年6月には、制度の創設に加えて、法整備や財政支援を含めて普及を急ぐ方針も伝えられました(出典:日本自動車会議所)。制度の具体化とあわせて、購入への助成も検討されていると報じられています(出典:LIGARE)。
ここで気をつけたいのは、認定を受けても車のレベルが上がるわけではない、という点です。国のお墨付きが付いても、運転の主体と責任は運転者のままです。
課題として指摘されているのが、E2E方式ではAIの判断の根拠が外から見えにくいことです。万が一の事故のとき、原因の究明が難しくなる可能性があると言われています(出典:自動運転ラボ)。トヨタがガードレールと記録の仕組みを同時に説明しているのも、この問題を意識してのことだと読めます。
運転から離れている人には、どういう話なのか(筆者の見立て)
ここからは公表された事実ではなく、筆者の見立てです。
まず時期の感覚です。日産は2027年度、トヨタは2028年に一部の車種からで、拡大は2030年以降としています。ここに、車を買い替える周期が重なります。乗用車(軽自動車を除く)の平均使用年数は13.35年です(出典:自動車検査登録情報協会)。
新しい機能が発表されてから、街を走る車の多くがその機能を持つまでには、かなりの時間がかかります。2027年や2028年は、買い替えの時期が重なった人から順に手に入れていく段階です。世の中全体が変わるのはもっと先だと見ています。
次に、中身の話です。楽になるのは、高速道路の長い移動、渋滞、合流、車線変更のあたりからだと考えています。逆に、住宅街の細い道、路上駐車をよけながらの走行、歩行者や自転車との譲り合い、狭い駐車場での切り返しは、人間の担当として長く残ると見ています。
つまり、人が苦手だと感じる場面と、機械が苦手な場面は、きれいには重なりません。ここは筆者の見立てです。
そして、ここが一番のねじれだと思っているのですが、レベル2++は「運転できる人」に向けて作られた機能です。運転に慣れた人が長い距離を楽に走るためのもので、運転から離れている人がいきなり乗って安心できるものではありません。手を放していられる場面が増えるほど、いざ代わるときの難しさは上がります。この点は別のテーマになるので、稿を改めます。
この記事のまとめ
2027年度から2028年にかけて日本で売られる新型車は、自動運転車ではありません。運転支援としては大きく進みますが、監視と責任は運転者に残ります。
だから急いで何かをしなければならない、という話でもありません。運転する予定がないのであれば、このニュースを理由に慌てる必要はないと思います。
これから車を買う予定がある人は、カタログや販売店の説明で、「レベルはいくつか」「手を放していてよい条件は何か」「どこで人が代わることになるのか」の3点を確かめると、実態に近い理解ができます。「自動運転」という言葉が広告に出てきたときほど、この3点が効きます。
本当の意味での自動運転は、レベル4のバスやタクシーという別の線路で進んでいます。暮らしが変わるとすれば、まずはそちらからです。その話は、稿を改めて書きます。
なお、自動運転をめぐる状況は数か月単位で変わります。この記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。実際に購入や契約を検討する際は、各社の最新の発表と、国土交通省の制度の状況をご確認ください。
出典一覧
[1]Car Watch「トヨタ、2028年よりレベル2++の自動運転を導入開始 Waymoとのロボタクシー事業参入も検討」(2026年8月27日)
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/2136234.html
[2]NOVAIST「トヨタ、AI運転支援『レベル2++』を2028年から導入 2030年以降に対象車種を拡大」(2026年8月)
https://novaist.jp/articles/toyota-level-2plus-2028/
[3]日産自動車「2027年度に発売予定のAI技術を搭載した次世代運転支援技術(ProPILOT)を公開」
https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/250922-01-j
[4]日産自動車「次世代ProPILOT」(技術紹介ページ/レベル2である旨の注記を含む)
https://www.nissan-global.com/JP/INNOVATION/TECHNOLOGY/ARCHIVE/NEXT_GEN_PROPILOT/
[5]国土交通省「自動運転車の安全技術ガイドライン」(平成30年9月)
https://www.mlit.go.jp/common/001253665.pdf
[6]日本自動車会議所「国交省、自動運転の『レベル2++』認定制度を創設へ」(2026年4月)
https://www.aba-j.or.jp/info/industry/26512/
[7]日本自動車会議所「政府、自動運転の法整備・財政支援急ぐ 2026年度内に『レベル2++』の認定制度」(2026年6月)
https://www.aba-j.or.jp/info/industry/27368/
[8]LIGARE「レベル2++普及に向け、国交省が施策進める考え 自動運転社会実現本部」(2026年6月)
https://ligare.news/story/mlit_20260608/
[9]自動運転ラボ「自動運転AIの実力、国が採点 レベル2++で『優良認定制度』」(2026年6月)
https://jidounten-lab.com/u_63597
[10]デジタル庁「モビリティ分野に関する提言」(2026年6月16日)
デジタル庁 提言(PDF)
[11]自動車検査登録情報協会「乗用車の平均使用年数」(2025年3月末)
https://www.airia.or.jp/publish/file/shiyounensuu_2025.pdf